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お父さんのための野球教室の桜井です。

先日このようなご質問をいただきました。


Q:冬はどのような練習メニューが良いですか?


この度、野球の監督になりました。まだ、子供が入って半年ちょっとなのですが。私自身は野球の経験は長いですが、指導者としては新米です。

今、悩んでいるのは、これからの冬のトレーニングです。

冬の間はどのような練習メニューとしたらよいのでしょうか?何かアドバイスがあれば、お願いします。

A:小学生で最優先するのは動作の習得です


これから冬の時期のトレーニングに向けて、小学生の時期にはどんなトレーニングが必要なのかということと、具体的なトレーニングを紹介していきますね。


小学生の時期は走り込みより動作の習得


野球経験がある方であれば、冬のトレーニングでは走り込みをさせられた?経験があると思います。

野球部あるあるですが、走るのことが好きな選手はチームで二人から三人で、大半の選手は「早く終わって欲しい」と思っています。

冬の走り込みで心肺機能を高めることも大切なんですが、もう少し先の小学校高学年から中学生の時期にしっかりと取り組めば問題ありません。

それよりも小学生時期にはやるべきことがあります。

たくさん体を動かすこと、色んな動作のやり方を習得することです。

運動能力は、「脳・神経系」と、「呼吸循環器系」と、「筋・骨格系」の3つに分類され、能力が発達する時期はそれぞれで異なっています。

スポーツ科学の第一人者である宮下教授が発表している「こどもの発育パターン」では、それぞれの能力が発達する時期は以下のように示されています。

・小学生時期(11歳以下):「脳と神経系」が高まる
・中学生時期(12歳から14歳):呼吸循環器系が高まる
・高校生時期(15歳から18歳):筋・骨格系が高まる


それぞれの運動能力が高まる時期(年代)は異なっていて、その能力が伸びる時期に最適なトレーニングを行うことで、より効果的に能力を高めることができるんです。

見ていただくとわかるとおり、小学生の時期は動作を習得するための大切な時期で、いろんな体の動きを経験して、「脳・神経系の運動能力」を高める時期なんです。

この時期に「動作の習得」をしておかないと、「脳・神経系の運動能力」が伸びないうえに、中学生や高校生の時期に取り組んでも小学生の時期ほど能力が伸びません。

また、中学生や高校生の時期に「脳・神経系の運動能力」に時間を割くことは、発達させるべき心肺機能や筋力のトレーニングの時間を奪ってしまうことにもなります。

参考:宮下教授のデータが掲載されている仙台市のスポーツガイドブック
https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/341040.pdf


脳・神経系の運動能力を高める「3つの動作」


なので、小学生の時期は「脳・神経系の運動能力」を高めるために、「動作の習得」を中心にトレーニングを行って欲しいと考えています。

「動作の習得」の「動作」とは、大きく分けて3つあります。

1. 思い通りに体をコントロールできること
2. スピーディーに動けること
3. 素早く反応できること


この3つの動作は、野球の上達には欠かすことができません。技術の土台になるのがこれらの3つの動きだからです。

どんどん上達していく子どもは3つの能力が高くて、指導すればすぐに習得をして、さらに自分で精度を高めていける選手です。

例えばゴロの捕球ひとつをとってみても、3つの能力が高いこどもは打球に対する反応が良くて、素早く打球に追いつくことができます。

そして、体を思いどおりにコントロールできるので、捕球するときにバランスが安定して、送球へスムーズに移行できます。

さらにイメージ通りに自分の体を動かせるので、「こうすればもっと効率よく体を動かせる」という発想を持ち、指導したことを自ら精度アップしていけます。

サッカーでは、自分の動きはボールと相手の動きが関係しますが、野球の場合は、自分の動きに関係するのはボールだけです。

その分、野球では動きの質が結果に直結するので、動きの質を高めれば結果につながりやすいんです。

結果が出ると、もっと野球が面白くなってもっと練習をしたいと思うのは必然です。

そんな上達のスパイラルに子どもを乗せてあげるために、小学生の時期にしっかりと3つの動作をしっかりと習得していただきたいんです。


たくさん遊べ!しかも真剣勝負で


「思い通りに体をコントロールできること」、「スピーディーに動けること」、「素早く反応できること」の3つの動作を習得するために、やって欲しいことは「遊び」なんです。

もちろんスマホのゲームではなくて体を動かす遊びです。

とは言っても、わが家も同じですが、遊具が少ないシンプル過ぎる公園、車やバイクの交通量が多い道路、多発する不審者など、安心して子どもが遊べない環境があります。

防犯や安全を考えれば、家の中で遊ぶことも仕方のない部分もありますが、子どもが外で遊びにくい現状を憂いておりますが……。

本来は日常の外遊びの中で3つの動作は自然と養われていくはずですが、それが許されない環境や状況の中で、チームの活動の進め方が重要だと思っています。

特に冬の時期のチーム練習は3つの動作を習得するうえで貴重な時間になります。

シーズン中は、野球の技術練習に時間を使う必要がありますが、時間に余裕のあるシーズンオフは3つの動作を習得できる「遊び」を取り入れる絶好の機会です。

例えば鬼ごっこです。

縦・横・斜め・後ろに走りまわって、「止まって走る」を繰り返して、反応やスピードを鍛えることができます。

鬼がタッチするときや、タッチをかいくぐる動作は体のコントロール能力も高めるので、楽しみながら3つの動作を習得できる遊びです。

鬼ごっこを幼稚な遊びと思うなかれですね。

日本体育協会のサイトには、鬼ごっこをはじめ、たくさんの遊びのプログラムが紹介されているので、ぜひ練習メニューの参考にしてください。

日本体育協会のサイトはこちら


そのほかにも、野球以外のボールスポーツもいろんな動きを楽しく学べるので練習に取り入れて欲しいと思います。

文部科学省の学校体育実技指導資料にボールスポーツの指導法が紹介されているので参考にしてください。

文部科学省の「学校体育実技指導資料」低学年用はこちら
文部科学省の「学校体育実技指導資料」中学年・高学年用はこちら


SAQトレーニングもおすすめ


3つの動作を高めるために「SAQトレーニング」はすごく有効なトレーニングです。

SAQトレーニングとは、1980年代にアメリカで誕生したトレーニングで、「それまでの筋力重視のトレーニングでは競技レベルの向上に限界がある」という考えから広まった「動きを重視」したトレーニングです。

縄のはしご状の器具(ラダー)をまたいでステップする練習を見たことがあると思いますが、あの練習もSAQトレーニングのひとつです。

日本SAQ協会では、SAQを以下のように定義しています。

S:Speed: スピード (重心移動の速さ)
A:Agility: アジリティ (運動時に身体をコントロールする能力)
Q:Quickness: クイックネス (刺激に反応し速く動きだす能力)


参考:SAQ協会 http://www.nisaq.com/about/training.html


SAQの定義を見れば、小学生の時期にやるべきトレーニングそのものだと言えますよね。


SAQトレーニング「スクエアドリル」


SAQスクエアドリル


SAQトレーニングの中から一部を紹介します。ひとつ目は、「スクエアドリル」というメニューです。

上の図のように、一辺が約3メートルの四角の四隅に目印をおいて、四角形の辺に沿って指示する人の合図に従って、ダッシュとステップをするというものです。

ステップをする人は、常に前を向いた状態で、最初は右回りにダッシュとステップをします。

指示する人からの合図が出たら、反対回りにダッシュとステップをして、体をコントロール能力(アジリティ)を高めていくトレーニングです。


SAQトレーニング「クレイジーボールキャッチ」




もうひとつSAQトレーニングは「クレイジーボールキャッチ」と言って、上の写真のような凸凹のあるボール(クレイジーボール)を使うトレーニングです。

二人一組になり、片一方の人が、クレイジーボールをバウンドするように投げて、もう片方がワンバウンドしたボールを捕球します。

クレイジーボールのトレーニングは子どもたちも楽しみながら体のコントロール能力と反応を養うことができます。

SAQトレーニングは短時間で行えるメニューが多いので、ウォーミングアップのメニューや、バッティング練習の間に時間を持て余している子どもの練習にも最適です。

トレーニングは全て紹介できないので私も使っている本を紹介しますね。


SAQトレーニング最新版
監修:日本SAQ協会
出版社:ベースボール・マガジン社
発売日:2015-05-30



ドリルがメインの本ですが、要所に理論が入っていて知識を入れるのにも役立ちます。

本は全てカラーで、ドリルは写真と図解にくわえてDVDも付録されているので、細かな動作も理解もしやすいです。

SAQトレーニングはクレイジーボール、ラダー(はしご)、小さなハードルなど、一部のメニューは器具を使いますが、お金をかけずに代替えができるメニューもあります。

例えば、クレイジーボールならスーパーボールを5つ用意してガムテープで巻けば近いものができますし、ラダー(はしご)はラインを引くことで代用できます。

チームの負担にならないように、工夫をしてご活用いただけたら嬉しいです。


まとめ


今の時代、チームの指導者は気をつかわないといけないことがたくさんあって、ご苦労をされていると思います。

でも子どもたちの成長を一番に考え、特に小学生の時期は楽しく野球に取り組める環境をつくってあげることでチームの運営や雰囲気は必ず素敵なものになるはずです。

今回紹介をした冬のトレーニングもその一助になれば幸いです。