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photo by ダンは軽やかに空振り | Ryosuke Yagi | Flickr



お父さんのための野球教室の桜井です。

野球のルールはむずかしいとよく言われますが、代表的なものが「振り逃げ」です。

「なぜ三振したのに一塁へ走れるの?」と子どもに聞かれて、「ルールだから」と答えてしまっている方も多いのではないでしょうか?

そんな方へ、「なぜ振り逃げで打者は一塁へ走ることができるのか」をシンプルに解説します。

振り逃げのルールを知ると、「野球はむずかしい」のではなくて、「奥が深い」という発想に変わるはずです。

振り逃げのルールから、野球の奥深さと面白さを子ども達に伝えていただきたいと思います。


振り逃げのルールは内野ゴロと同じ!?


振り逃げとは、捕手が主審から3ストライクと判定されたボールを正しく捕球できなかった場合に、打者が一塁へ進む権利を与えられるプレーで、記録上は三振がつけられます。

振り逃げは英語でUncaught third strikeと言いますが、振り逃げは日本の正式な野球用語には存在しないんです。

誤解されがちなのですが、3ストライク目を捕手が正しく捕球できなかった場合、バットを振らない見逃しの三振でも振り逃げで打者は一塁へ進塁ができるんです

ここでキーになるのが捕手の「正しい捕球」です。

捕手の正しい捕球とは、投手が投げたボールが地面に触れずにミットに収まった状態、つまり投球をノーバウンドで捕球してミットの中にボールが入っている状態を指します。

3ストライク目を捕手がワンバウンドで捕ったり、ミットからこぼしたり、後ろに逸らしたりしたときに打者は一塁へ進塁をしてもいいよ、というのが振り逃げのルールです。

ただし振り逃げがいつも許されるかと言えばそうではありません。振り逃げをしても良い条件は2つ

1. 走者が一塁にいないとき
2. 2アウトのとき


どちらかの状況に該当していれば、打者に振り逃げが許されます。

0アウトか1アウトで走者が一塁にいる場合は、打者は振り逃げができませんが、2アウトであれば一塁に走者がいても打者は振り逃げの権利が与えられます。


打者の振り逃げの権利は「ダートサークル」が境界線


打者が振り逃げできることに気づかない場合もあります。そんなとき審判が打者に「振り逃げしないの?」と確認することはありません。

打者が振り逃げの権利があるのに一塁へ走らずダートサークルを越えたら主審はアウトを宣告します。

ダートサークルとは、ホームベースを中心にした直径が約8m(正確には7.925m)の円のことです。

芝生のスタジアムの中で土になっているエリアもしくはラインが引かれていて、打者が振り逃げの権利を行使するかどうかを判断を明確にするために、日本では2007年から正式にルール化されています。


振り逃げで走るのは打者の義務


「振り逃げ」という言葉の響きのせいか、「三振したのに打者が一塁に行けるのはずるい」と思われがちですが、打者に与えられている権利であり、一塁に走る義務があります。

振り逃げができる条件で、一塁に走らないのはゴロを打っても走らないのと同じで怠慢なプレーです。


なぜ三振なのに打者は一塁へ進塁する権利が与えられるのか


内野ゴロと振り逃げが同じなわけないでしょ?と思うかもしれませんが、守備でアウトを取る仕組みを知れば理解が深まります。


アウトは補殺と刺殺が関与する


野球でアウトを取るためには刺殺(しさつ)補殺(ほさつ)の2種類のプレーが関与します。

刺殺とは、打者や走者を直接的にアウトにするプレーを指して、補殺とは、アウトを補助するプレーを指します。

例えば、二塁手がゴロをさばいて一塁手に送球してアウトにする場面があったとします。

二塁手からの送球を捕って打者走者を直接的にアウトにするのは一塁手なので、一塁手に刺殺が記録されます。

ゴロをさばいて一塁に送球した二塁手には、打者走者をアウトにした補助をしたということで補殺が記録されます。ちなみに「捕殺」ではなくて補助(アシスト)を意味する補殺です。

2016年シーズンに広島カープの菊池選手が補殺歴代3位の記録をマークしましたが、菊池選手が記録した補殺はアウトを補助(アシスト)している数の記録だと考えるとプレーもイメージしやすいかと思います。


補殺と刺殺によるアウトのパターンで「振り逃げ」を理解


打者をアウトにするパターンは2つです。ひとつは、野手は打球をノーバウンドで捕球して刺殺するパターン。

もう一つはゴロなどを捕球して、打者走者が一塁ベースに触れる前にボールを持つ野手が打者走者の体か一塁ベースに触れるという補殺と刺殺が発生するパターン。

つまり打者をアウトにするには、「刺殺」もしくは「補殺と刺殺」のどちらかのパターンになって、最後は刺殺が必要になるわけです。

打者をアウトにするパターンを三振の場面に置いて考えてみると、3ストライク目を捕手がノーバウンドで捕れば刺殺が成立しますが、ノーバウンドで捕らない場合は正しい捕球ではないので、刺殺が成立していません

3ストライクで三振なので打席に立つ権利がない打者ですが、刺殺が成立していないので一塁へ進塁できるんです。これが振り逃げで打者が一塁へ進塁できる理由です。


ただしフォアボールのように出塁の権利ではなくて、内野ゴロと同様の進塁に挑戦する権利です。

従って守備側は打者走者をアウトにするために、ボールを持った捕手が打者走者に触れる(タッグ)して刺殺するか、もしくは一塁に送球して一塁ベースで打者走者をアウトにする補殺と刺殺のプレーが必要になるんです。


振り逃げができる条件は攻撃側を保護する意図がある


ここまで理解を深めると、なぜ振り逃げは一塁走者がいない場合と2アウトしかできないのかも理解ができると思います。

0アウトまたは1アウトで走者が一塁にいる場合に振り逃げができれば、捕手がわざとボールを落として、走者に進塁の義務を生じさせてダブルプレーを狙うこともできるからですね。

2アウトの場合ならダブルプレーがないので、振り逃げをしてもいいよというルールです。

振り逃げができないというよりも、振り逃げをさせないことで攻撃側が損をしないためのルールになっているんですね。


まとめ


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振り逃げのルールについて解説をしてきましたが、私も現役の頃はきちんと説明できないままプレーをしていた一人です。

ただ少し興味を持って勉強するとむずかしいものではなくて、刺殺補殺という守備の基本を理解すれば腹落ちします。

野球はもともと打者が投手に打ちやすい球を要求して、好きな球だけを打つスポーツでした。

3ストライクを捕手がノーバウンドできちんと捕球すれば三振というルールになったのは野球ができてからずっと後のことです。

振り逃げというルールを知れば、子ども達の野球に対する興味、奥深さの気付き、さらにはプレーの質もいっそう高まるはずです。