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photo by DSC06067 | SONY DSC | shiori.k | Flickr



お父さんのための野球教室の桜井です。

子どもに野球をさせたいと思う親は、子どもが右利き左利きに関係なく、幼いうちに左打ちにしておこうと考える人は少なくありません。

今回のブログは、小学生のお子さんを見守る保護者の方へ、子どもは「左打ちを練習しておいたほうがいいの?」というテーマについて私の考えを綴ります。

お子さんの上達の一助になれば幸いです。

先日このようなメールをいただきました。


Q:ペンと箸は左利き。野球は右利き。左打ちの練習をした方がいい?


息子は書くのと、食べるのは左利きなのですが、投げる、打つ、蹴るなどの動作は右利きです。

以前夏休みに短期で行ったスクールのコーチからは小学生のうちは右も左も練習した方がいいとアドバイス頂きました。

息子は走るのが早いので、陸上もしていて、監督やコーチからは足が早いから1番バッターと言われています。

左打ちで足が早いとゴロでも塁に出ることができると聞いたのですが、桜井さまは左の練習もした方がいいと思われますか?


A:左打ちの練習をしてください


小学生は右利きの子どもでも左打ちの練習をすべきという考えを私はもともと持っています。左利きの特性があればなおさらです。その理由は3つ。

1:左打ちのほうが出塁する確率が上がるから


野球はヒットの確率を上げるうえで左打ちが有利。理由は2つ。ひとつは右打者バッターボックスよりも左打者バッターボックスが一塁に近いからです。

塁間



参考:ホームベースから一塁ベースまでの距離
一般:27.431メートル
少年野球(低学年):21メートル
少年野球(高学年):24メートル
リトルリーグ(小学生):18.29メートル
ボーイズリーグ(小学生)22.86メートル

間一髪でセーフになるか、アウトになるかは数十センチメートルの違いです。

上の図で見ていただくとおり、左打者バッターボックスのほうが明らかに一塁に近いです。

バッターボックスの中で立つ位置によっては、右打ちよりも左打ちのほうが2メートル近く一塁に近くなります。同じ足の速さだと間違いなく左打ちのほうが出塁できる確率は上がります

もうひとつ左打ちが有利な理由は、バットを振った後に走りやすいからです。

左打ちの場合、スイングは時計まわりのため、バットを振ると体の正面が一塁側に向きやすいんです。

そのため、バットを振ったあとスムーズに一塁へ走り出すことができます

いっぽう右打ちの場合、スイングは反時計回りです。バットを振ると体の正面が三塁方向を向きます。

一塁に走るためには体の向きを一塁に変えないといけません。体の向きを変える動作に時間がかかります。

そのため右打ちは左打ちに比べると一塁への到達に時間がかかってしまうんです。

スタートする位置、バットを振った後の体勢、を考えるとどちらも左打ちのほうが早く一塁に到達できる条件になっているので、左打ちのほうが出塁する確率が高いと言えます。


2:お子さんの可能性がひろがるから


左打ちと右打ちの両方できるバッターをスイッチヒッターとよびます。

スイッチには転換や変更という意味で、左打ちと右打ちを変更できることからスイッチヒッターとよばれます。

スイッチヒッターは間違いなくお子さんの武器になります。

バッティングでは、対する投手の利き手と反対の打ち方のほうが打ちやすい傾向があります。

例えば、相手チームの投手が右投げなら左打ちのほうが打ちやすい。逆に投手が左投なら右打ちのほうが打ちやすいというものです。

理由は、投手の利き手と反対の打ち方だと、投手の投げたボールが打者に向かってくるので、体を回転させても打ちやすいからです。

これはあくまで傾向で、左投げに強い左打者もたくさんいます。

ただこういったセオリーに沿って選手を起用する監督が多いので、相手の投手によっては起用されない場合もあります。

しかしスイッチヒッターなら左右どちらの投手であっても、そういったセオリーによる選手起用に影響されることはありません

スイッチヒッターは誰でもできるものではありません。プロ野球選手でも数えるほどです。

とても貴重な存在のスイッチヒッターになれる可能性を広げて欲しい、というのが私の意見です。

可能性という意味では、左利きの特性の子どもが右打ちをすることで、可能性を狭めることもあります。

経験則ですが、もともと左利きにも関わらず「右投げ・右打ち」を何年も続けていた私の同級生がいます。

投げる打つの動作がぎこちないので、ある時、少年野球の監督が「左利きじゃないのか?」と聞いたところ、彼は「そうだ」と答えました。

その日から「左投・左打ち」に変えたところ、球は速くなるし、ヒットも打つしで、私も子どもながらに適正ってあるのだなと感じました。

どちらの打ち方がお子さんに合っているかは、しばらくどちらもやってみたうえで決めても遅くありません

特に左利きの特性がある場合、すぐに右打ちや左打ちと決めずに、どちらの打ち方が合っているかを見極めてあげてください。


3:体のバランスを整えるから


野球のデメリットは、同じ動きを繰り返すことだと私は思っています。なぜなら動きがいっぽうに偏って、左右の筋肉のバランスが大きく異なってしまうからです。

もちろん日常生活でも利き手側の筋肉をよく使うというのもありますが、野球はさらに助長します。

サッカーの場合、選手の動きが流動的なので、ありとあらゆる方向に体を動かします。右足を使えば左足も使います。

ところが野球は、同じ打ち方で何回もバットを振ります。走る方向も反時計まわりと決まっています。

ピッチャーは典型的ですよね。捕手に向かって数えきれないほど投げるのですから。

同じ動きを繰り返すということは、同じ筋肉(関節)を使うということです。

使う頻度の多い筋肉とそうでない筋肉では発達の仕方が異なります。例えば右投げなら左の背筋よりも右の背筋の方が大きくなります。

体の左右のバランスが違うと、将来的に体のゆがみから、筋肉の痛み、関節の痛み、血行不良、神経の圧迫などにも影響する場合もあります。

私自身も右の背筋と左の背筋の大きさが違います。同じ投球動作を繰り返して、腰の骨の形も左右で違います。

20代の頃は特に問題も生じませんでしたが、40歳近くになると腰痛の頻度も高くなっています(たんに歳のせいもありますが)。

すぐに体に影響は出なくても、何十年先のことも考えながら子どもの成長を見守ってあげる責任が大人にはあると思っています。

前置きが長くなりましたが、そういう観点から、スイッチヒッター(両方の打ち方を練習すること)は左右均等に体を動かすひとつの手段になると考えています。


スイッチヒッターは練習する時間が短くなるのでは?


スイッチヒッターで言われるのが、それぞれの打ち方で練習量が少なくなるということです。

例えば10スイングするバッティング練習で、右打ちの人なら10回右打ちを練習できますが、スイッチヒッターはそれぞれ5球ずつの練習しかできないという考え方です。

色んな考え方があってよいと思いますが、私はそのような考え方は視野が狭いと思います。

上達するのに10スイング必要なら、両方で10スイングすればいいんじゃないの?と思います。それが人よりも努力をするということ。

あり得ませんが、もし5球しかスイングできないなら、5球で上手くなる方法を自分なりに考えればよいと思います。それが工夫です。

右打ちだけ練習している人が上手くなるのであれば、右打ちの人が全員プロ野球選手になって活躍しないとおかしいですよね。

つまり、上達はただ単に何回バットを振るかではなく、練習量、練習の質、どれだけ情熱(集中)を持って取り組んだか、という総合的な積み重ねなんです。

打ち方で上手くなるかならないかは絶対に決まらないのです。


まとめ


スイッチヒッターはヒットの確率をあげて、体のバランスを均一にするという意味でも賛成です。

特に小学生の年代はいろんな動きを身に付けることができます。適正を見極めるという意味でもスイッチヒッターにトライして欲しいと思います。

固定観念を持たず自由な考えでお子さんの可能性を伸ばしてあげてください。